平屋の建築を検討する際に、大きなポイントとなるのは中庭の配置によって、建物形状がロの字型、コの字型、L字型に分かれてくるという点になります。ここでは、中庭を建物の中心に配置するロの字型について取り上げ、メリットとデメリット、そして中庭の設置ポイントについて解説します。平屋の間取りを考える参考としてみてください。
ロの字型の平屋ならではのメリット、その筆頭に挙げられるのはご自宅の中心に、プライベートな屋外空間を設けることができるという点になります。それこそ四方を建物で囲まれているため、外からの視線を大幅に遮ることができ、プライバシーの保たれた屋外空間を手に入れることができます。例えば、友人を招いてバーベキューパーティーを行ったり、夏場にビニール製プールを設置して、お子さんと水遊びを楽しむといった場合も、周囲の目を気にする必要はほぼありません。
中庭を建物の中心に配置するロの字型の平屋は、光や空気を採り入れる大開口部を建物の内側に設置することができます。それゆえ道路や燐家と接する建物の外側の窓を相対的に少なくすることができ、結果として外観デザインの自由度がより高くなります。もちろん中庭のデザインについても然り。天然の無垢材を用いたウッドデッキをしつらえることも、玉砂利を敷き詰めた枯山水庭園にすることも、意のままに行うことができます。
ロの字型の平屋は建物の中心に中庭を設置するという建物形状になります。建物の中心に天井のない開けた空間があることで、視覚的により広く開放感のある場所と感じることができます。2階以上の多層階住宅に吹き抜けを設けて開放感を演出するというのと同じ効果をもたらすことができ、日々の生活のなかで心身をよりリラックスさせてくれるというメリットも期待できるのです。
ロの字型の平屋には、建物の中心に屋根のない中庭がしつらえられ、中庭に面した部分には大開口部を設置することができます。言うなれば、建物の中心に大きな天窓が設置されているようなもの。前述しました視覚的な開放感に加え、陽当たりの良さによる大きなリラックス効果も期待できます。また中庭に面した大開口部から光が差し込んでくるという光景は、ご自宅でありながら、リゾートホテルに滞在しているような気分を満喫することができます。
ロの字型の平屋はその構造ゆえに、一般的な一戸建て住宅よりも、より広い敷地面積が必要となるため、新築のために土地を取得するための費用も相対的に高額になっていきます。建築費用についても然り。一般的な平屋と比べ形状的により多くの柱が必要となるのに加え、中庭に面した大開口部を設置するためには、耐力壁など建物全体の強度や耐震性を高める必要があります。
中庭の四方を建物が囲むという構造のロの字型の平屋では、雨が降った際の水はけ対策が不可欠となります。とりわけ地球温暖化が原因と思われる大雨やゲリラ豪雨が多発している昨今ではなおさらです。中庭をウッドデッキやコンクリート敷きとする場合はもちろん、芝生や土の場合でも、排水溝や排水管を設置するのは最低限。その上で必要に応じて、機械式の排水設備の設置も検討する必要があります。加えて、中庭に面した建物部分にも防水素材を用いるなどの工夫が求められます。
中庭の四方を建物が取り囲む構造のロの字型の平屋は、例えるなら京都府京都市や山梨県甲府市など周りを山々に囲まれた盆地のようなもの。夏の時期は熱気が、梅雨の時期は湿気が、どうしてもこもりやすくなってしまいます。とりわけ湿気はカビが発生しやすくなり、そのままだと人体はもちろん、建物にも悪影響を及ぼしてしまいます。熱気に関してもエアコン依存度の上昇や熱中症リスクなどが考えられます。サーキュレーターなどを用いて、空気をしっかり循環させるなどの対策が必要となります。
上記にもありますが、「採光性に優れている」というメリットを享受するためには、中庭に面した建物部分に大開口部を設置する必要がありますが、それは同時に建物の断熱性が低くなり易いというデメリットでもあります。それゆえに、例えば建物の影や天井により高性能な断熱材を用いたり、大開口部に用いるガラスを断熱性に優れたペアガラスや複層ガラスにするなどの対策が求められます。それらの対策にかかる費用も、トータルコストを押し上げる要因となります。
大雨や熱気、湿気、断熱性への対策と関連し、中庭自体のメンテナンスにも手間と時間をかけなければならないという点も見逃せません。日々の掃除はもちろんのこと、例えば天然芝であれば適度なタイミングでの芝刈り、ウッドデッキであればカビの除去とワックス掛けなど。そうしたメンテナンスを怠ると、見た目が悪いばかりか、ご家族に健康被害をもたらすリスクも考えられます。
ロの字型の平屋の中庭には、建物の構造上どうしても雨水が溜まりやすくなってしまいます。対策としては雨水を逃がすための排水溝や排水管を設置するというのが第一。「見栄えが悪くなるから嫌だ」という場合には、設計士や建築業者にその旨を伝え、排水口を目立たないようにしたり、排水管を地中に埋めるなどの工夫を考えてみてください。そうした耐水対策をしっかり行った上で、万一排水が追い付かない位の大雨となった場合に備え、建物への浸水を食い止めるための防水対策もしっかり行っておくことも重要です。
ロの字型の平屋を建て、憧れの中庭を実現したものの、清掃やお手入れの大変さに後悔したというケースも、実は少なくありません。なかでも多く聞かれるのが、次から次へと生えてくる雑草の刈り取りとのこと。そうした手間暇を最小限に抑えるための対策としては、中庭の植物はなるべく少なめとし、地面には玉砂利を敷くなどして、雑草が減るようにするといった方法がお勧めです。
以上の通り、ロの字型の平屋にはメリットも多い反面、デメリットも少なくありません。それらをしっかりと考慮した上で、後悔のない家造り取り組むというのが賢明です。
なお当サイトでは平屋の各種事例や注文住宅会社の選び方のポイントなど、平屋づくりで役立つ情報をまとめています。ぜひ参考にしてみてください。